テンペスト

嵐は去っていった。
マンションの敷地に植えられているやしの木の大きな葉っぱが、千切れて無残に地べたに転がっている。町中のあちこちで、信号機やら何やら修理や復旧作業中。



台風と共に我が家の子供達も秋休みに突入。
そして通知表が我が家の中学生の長男にも「嵐」をもたらした。

通知表に「関心・意欲」が導入された時点で、私自身はもう、あまり信憑性を見出せなくなってしまったが。絶対評価の基準が今年度、新たに変わった。

コーチングの本を読むと、うまく行かない時は本人自身が「失意」や「挫折感」を経験しているのだから「反省」なんて求めてはいけない。ただ戦略上の間違いがあったにすぎないのだから、新たに「戦略」を練り直し、改善案を出させ、実現するスキルを身に付けさせることが大切なのだそうだ。

学校制度や評価がコロコロ変わるのは、どうにも出来ない。付けられた結果は変わっても子供の実力は、変化してないのだからね。親ができる事といえば、新たな「戦略」を子供と一緒に考えてやる事くらい。しかし、腐っている子供に次の行動を起こさせる事は、親としてなかなか難しい。

それでも休み中に、我が家の長男の「嵐」もどうやら通り過ぎたようだ。
「雨降って地固まる」。

その長男が、来年のピアノの発表会の曲を何にするか、悩んでいる。

もう上を望まず、ただ自分の弾きたい曲を弾けるようにしたい、という心持ちでレッスンを続けている息子。個人レッスンに変わってからは、ずっと自分の好きなドビュッシーばかり弾いていた。(ちなみに私はそれまでドビュッシーなんて知りませんでした)。
夏の昼下がりのような、アンニュイな、気だるい、微妙なリズム展開が、彼の何かを刺激したらしい。

美しい色彩がイメージされる綺麗な曲が多いが、なぜか聞いていると眠くなってしまう私。何度、息子の曲を聴きながらうとうとしてしまった事か。どうやら、私の眠気中枢を刺激する作曲家らしい。

ピアノ講師がさすがに、そろそろ違う作曲家の曲も弾いてみたら、と婉曲的に切り出した。そうだろうね。ドビュッシーって、何だか如何にも教えにくそうだ。最後は感性で弾くという感じになってしまう。

で、次に選んだ作曲家はベートーベン。
いきなり「月光」。有名な第一楽章が弾きたかったらしい。第一、第二楽章はまだいい。第三楽章はさすがにまだ無理と思われたが、「弾ける、弾ける!」という若くて、美人のピアノ講師にけし掛けられて、息子はその気になる。
まだ長袖の季節から初めた「月光」は、半袖の時期を過ぎても、いまだに仕上がらない。

しかし、ドビュッシーよりは、私には遥かに好ましい。なんと言ってもわかりやすいのだ。
荒々しく情熱的に盛り上がったかと思えば、やさしく穏やかに変わる。何を訴えようとしているのかが、少なくても理解できる気がする。

息子の弾いている「月光」の第三楽章はもう耳にタコが出来るほど聞いているが、不思議に眠くならない。(初期の「ヘタクソ期」は眠いというより、お経を延々と聞かされるような苦痛を味わったが)。いやそれよりも、いつのまにかこちらが感情移入するほど、聞いていて楽しめるようになった。
ベートーベンの苦悩も情熱も実に人間的だから、凡人の私には向いているのだ。
「ピアノの詩人」のショパンの曲や「神が授けた」モーツァルトの曲は、恐れ多くてどうも…。

そして結局、発表会の曲は、ベートーベンにすると言い出した息子。色々とCDを聞いた結果、「テンペスト」の第三楽章に決定する。中期の曲は難しいと言われたそうだが、この曲が気に入ったそうだ。
あ~あ、し~らないぞ。楽譜を見ても、もうさっぱりの私。
まあ、肝心なのは本人のやる気だからね。

我が家の長男の所には、これからもテンペストは襲ってきそうだが。
気持ちでピアノを弾くタイプの長男は「嵐」に出会うたび、気持ちをぶつける場所が一つでもある事は、きっと幸福なのだろう。


*この記事はmiki_rengeさんの「働く人々~シブトクつよく明るくいきましょ」の「やる気は有限」にTBしています。
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by riro11 | 2004-10-11 02:08 | 風趣


花が咲こうと咲くまいと、生きていることが花なんだ      (by イノキ)


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