素数と子供の関係~ 『博士の愛した数式』(小川洋子著)を読んで

この本は、ひと言で言うと、交通事故で記憶能力に障害を負った、数学博士の老人と、
その身の回りの世話をする家政婦とその息子との、暖かい友情の物語です。

数式、そして特に素数に魅せられた博士が、繰り広げる美しくも神秘的な数字の世界。
家政婦と老博士の静かな心の通い合い。
タイガースファンの息子と博士の野球をめぐるほのぼのとしたエピソード。
これらも、この小説の大切な部分ですが、
私が心に一番残ったのは、もうちょっと別の部分です。

今振り返っても、博士が幼い者に向けた愛情の純粋さには、言葉を失う。(P178)
と主人公の家政婦が言うように、数字にとりつかれたような偏屈な博士が実は、
子供、特に家政婦の息子(愛称:ルート)をとても大切に思い、
愛情たっぷりにかかわるくだりです。

この小説には、実は子育ての重要なヒントが、ページのあちらこちらに隠されていました。

子供の心配をするのが、親に課せられた一番の試練だ(P193)
と博士は大真面目に言うのです。

そしてここに、博士の子供に対する暖かい眼差しの答えがありました。
彼(注:博士)はルート(注:息子の愛称)を素数と同じように扱った。素数がすべての自然数を成り立たせる素になっているように、子供を自分たち大人にとって必要不可欠な原子と考えた。自分が今ここに存在できるのは、子供たちのおかげだと信じていた。(P180)

この小説を読み終わって、つい先日帰省したばかりの実家の父親の事が、
博士とオーバーラップしました。
元々子煩悩であった父は、責任のない孫にはそんな性癖にさらに拍車をかけ、
長い間大いに、親バカならぬ孫バカぶりを発揮していました。
遊びに行くと、隣に住んでいる幼い内孫達を抱っこしては、いつも、
「この子は、じじの大切な宝物」と口癖のように言い、相好を崩していたのを
よく覚えています。

そんな内孫の一人はちょうど今反抗期の真っ盛りで、親ともあまり口をきかないらしい。
でも、何だかそんな話を聞いても、私はあまり心配しませんでした。
小さい頃、誰かに思いっきり可愛がられた子は、仮に寄り道をしても、時が来れば、
また必ず戻ってくるだろうと信じているから。
瞼を閉じればたちまち、「じじの宝物」と言われてちょっぴり照れていた、
姪の嬉しそうな顔が浮かんでくる。

この本は、そんな事を思い出させてくれたのでした。
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by riro11 | 2005-08-22 23:58 | 激奨


花が咲こうと咲くまいと、生きていることが花なんだ      (by イノキ)


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